急増するスーパー銭湯 |
1.新たな需要を開拓したスーパー銭湯
スーパー銭湯とは、サウナ、露天ぶろ、薬草湯、ジェットバスなど、色々な種類の浴場を完備した低価格レジャー施設である。明確な定義はなく、自治体による温泉保養センター型や従来の銭湯のリニューアル型、大型銭湯の郊外立地型など様々なタイプに分けられるが、最近増加が著しいのは郊外立地の大型銭湯(以下、これをスーパー銭湯と呼ぶ)である。正確な数は不明だが、既に全国で 150〜 200店ほどあると言われている。
スーパー銭湯の特徴としては、数種類の浴場を完備しているほか、 (ア)入浴料をほぼ従来の銭湯並みの低価格に設定している、(イ)ヘルスセンターのような宿泊施設や宴会場を持たず、レジャー的要素を抑えている、 (ウ)住宅地の郊外に立地しており、利用者の約8割が自動車を利用してやってくる、といった点があげられる。また、従来の銭湯と違い、主に自宅に風呂のある顧客をターゲットとしている。自家風呂では味わえない広々とした浴槽や薬草湯、ジェットバスなど何種類もの風呂を低料金で楽しめることから家族客や若い女性を中心に人気が高まっている。
2.異業種からの参入
スーパー銭湯が急増している理由として、同事業への参入が比較的容易であることがあげられる。標準的な施設の場合、駐車場を含めて 1,000坪ほどの土地があれば4〜5億円の設備投資と3〜4人の従業員、数人のパートで運営できる(表1)。これは、宿泊施設や宴会場といった入浴施設以外の設備投資を省き、また、コンピュータ制御による温度管理システムや自動発券機の導入によって人件費を抑えているためである。
また、都道府県から普通浴場(注)と認められると、水道料金や都市計画税・固定資産税の減免といった優遇措置が受けられることもスーパー銭湯経営の大きなメリットである。このため、パチンコ店の経営者、中古自動車の販売業者、工場遊休地の有効利用を目指すメーカーなど従来銭湯経営とは無縁の異業種からの参入が相次いでいる。
(注)普通浴場・・・ | いわゆる一般の銭湯。入浴料金が「公衆浴場入浴料金の統制額の指定等に関する省令」に基づく都道府県知事の統制を受け、かつ、当該施設の配置について公衆浴場法第2条に基づく都道府県の条例による規制の対象とされている。 配置基準としては、東京都23区の場合、周囲 200メートル以内に他の普通浴場がないことなどが規定されている。 |
表1 スーパー銭湯とヘルスセンターの事業特性比較 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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(資料)月刊レジャー産業資料等 |
3.今後の展開
スーパー銭湯は、関西・中部を皮切りに、九州、関東でも続々と建設されつつあり、今や全国的に出店ラッシュを迎えている。中でも中部地区では今年に入ってから既に18軒も出店されるなど(表2)、早くも一部で乱立傾向が目立ち始めている。
スーパー銭湯は従来の普通浴場のレベルをはるかに超えたヘルスセンター並みの浴場設備を低料金で提供することで、ハード面でのコストパフォーマンスの高さを売りものとしている。しかし、一方では企業間に料金や設備内容であまり差がないため、独自性を出しにくく、近くに新しい店ができると客が簡単に流れてしまうといった面もある。このため、レストランやカラオケなどを組み合わせた、複合事業の提供で独自性を出そうとする企業も現れているが、相乗効果が働くかは十分なマーケティング調査が必要となろう。安易に事業拡大すれば、スーパー銭湯の最大の売りものである低い料金設定そのものに手をつけなければならなくなる。
表2 東海3県のスーパー銭湯進出状況(96年)
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(資料)月刊レジャー産業資料 |
(吉田 裕二) |