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投稿記事Posted: 2015年8月09日(日) 14:31 
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管理人

登録日時: 2014年7月25日(金) 11:06
記事: 74
毎年この時期になると、終戦関連企画でメディアは賑わうが、「戦後70年」の今年の夏は、とりわけ騒がしい。

戦争とは、悲惨なものだ。
しかし、その悲惨さを伝えることが、皆が共有することが、はたして戦争の抑止に、どれだけ有効なのだろう。

戦場での飢餓の体験。では、飢餓のない戦争なら許容されるのか。
空襲を受けた悲惨な体験。では、空襲のない戦争なら許容されるのか。
特攻での若者の死。では、特攻のない戦争なら許容されるのか。

太平洋戦争期、日本軍が補給を軽視して、いたずらに戦域を拡大させたがために、前線で多くの飢餓が発生した。それは日本軍の戦争計画に無理があったためであり、戦争そのものが飢餓を内包しているわけではない。
空襲や特攻は、すでに日本の敗北が決定的となった後も、政府・軍の指導者層が、決断を先送りにして、いたずらに戦争を継続させたために起きたことであり、戦争そのものが空襲や特攻を内包しているわけではない。

悲惨な戦争を起こしてはならない、という主張は、たしかにその通りなのだが、では悲惨でなければ、戦争は許されるのだろうか。あるいは、悲惨の程度と、国益の程度を天秤にかけて、多少の悲惨さには目をつぶってでも国益保護を優先させる、という判断があったとしたら、それにどう、対峙していったらいいのだろうか。

また、戦争が起きる、あるいは、戦争が拡大する、その意思決定過程において、「戦争の悲惨さ」という要素がさほど重要でないのなら、いくら悲惨さを訴えたところで、戦争の発生や拡大を現実的に阻止する力を、持ち得ないのではないのだろうか。

戦後、「所得倍増計画」を打ち出した元首相の池田勇人は、その著作のなかでこう述べている。

「国民的な貧困を、戦争に訴えて、領土や勢力圏の拡張によって克服しようと考え、その戦争準備のために、逆に国民生活が益々圧迫されるという矛盾、そしてとどのつまりは、戦敗国はもちろん、戦勝国も戦争の被害とその影響のために、長い間苦しむといった矛盾を、人類は歴史のうちに繰り返してきた」(『均衡財政 附・占領下三年のおもいで』中公文庫、1999年、43ページ。じっさいにこの文章を書いたのは池田本人ではないと思われるが)

意訳をすれば、つまり池田は、国民を幸せにしようとして起こした戦争に、当の国民が不幸せをこうむるという矛盾、を指摘していると思われ、それは結局のところ、「戦争の非合理性」を語っていると思われる。
戦争で幸せになろうということ自体が非合理的であり、幸せはもっと合理的手段によって追求、達成すべきだ、と、池田は「3等切符」の大蔵官僚だった戦中から、そう思っていたのではないだろうか。

合理的ではないから、戦争はやめよう。
我々は歴史から学べる教訓とは、たとえば、そういうことなのではないだろうか。

また、日本という国が太平洋戦争開戦に至った経緯、それに、戦争終結に至った経緯をつぶさに見ていくに、思うことのひとつは、
この国は、頑張りすぎたのではないのか、
ということである。
頑張ったがゆえに、「まさか、この日本という、資源のない小国が、わがアメリカに牙を向けることはありえまい」というアメリカ側の観測を裏切って、日米開戦に至ったわけだし、敗戦は決定的となった後もあくまで有条件降伏を夢見て頑張ったがゆえに、空襲、特攻、沖縄戦、原爆、そしてソ連参戦と、次々と悲劇が日本を襲ったわけだし。

僕らは「頑張る」を美徳ととらえているが、本当にそうだろうか。「頑張る」には、戦略がない。「しゃにむに頑張る」とは言うが、「戦略的に頑張る」とは言わない。また、「頑張る」には「甘えの構造」が内包されているように思われ、つまりは一種の逃げ、「頑張る」という輝かしさの陰で、思考や責任の放棄が平然とまかり通っているように思われる。

…ということを考えるにつれ、敗戦の教訓として、
頑張らないと決めてみる、
といったこともありえるような気がするが、現実には、戦後、とりわけ、高度経済成長期の日本は、やはり、しゃにむに頑張ったという事実からして、敗戦の教訓というのは、いまひとつ、戦後の日本に活かされていないように思う。

もちろん、先人たちがしゃにむに頑張ったから、いまの豊かさがあるのだ、という指摘はあるだろう。
が、僕らはいつまで、おそらく明治維新以降に国全体を覆った基本セオリー「頑張る」の呪縛のなかで、もがき続けるのだろうか。
そろそろ、「頑張る」から卒業しても、いいのではないのだろうか。


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