frat.jpフォーラム
http://frat.jp/forum/

アントニー・ベスト『大英帝国の親日派─なぜ開戦は避けられなかったか』
http://frat.jp/forum/viewtopic.php?f=8&t=110
ページ 11

作成者:  fratdrive [ 2015年11月23日(月) 17:22 ]
記事の件名:  アントニー・ベスト『大英帝国の親日派─なぜ開戦は避けられなかったか』

アントニー・ベストの『大英帝国の親日派─なぜ開戦は避けられなかったか』(武田知己訳、中公叢書、2015年)を読み始めている。

まださわりしか読んでいないが、「太平洋戦争が本質的には日英戦争であった」(p4)ことは、太平洋戦争関連の取材を通して僕も強く思っていたことであったし、本質的でありながらも、少なくとも一般の認知が薄い現実をみるに、いわば「追っかけ甲斐のあるネタ」とも感じている。この本は、今後の取材を進めていくうえで、基礎的な情報やヒントを与えてくれるのではないかと期待している。

さて、冒頭の「日本の読者へ」と最終章の「吉田茂」、そして武田知己氏の「解説にかえて」にざっと目を通しただけの段階で、感じたこと。

通説では、昭和20年8月までの日本は「軍部」が牛耳っており、外交も「軍部」によってねじまげられたことによって、昭和16年の開戦、そして昭和20年の終戦、という事態に至ったのだということになっている。
そういう側面があったことも否定はしないが(外交官がよく口にする「内交」)、これまではあまりにもそうした面が強調されすぎていて、日本の外務省、日本の外交官みずからによる、日本外交の失敗については、認知も検証も反省も、なおざりにされてきたのではなかったか。
たとえばこの本では、吉田茂を含む日本の外交官が、イギリスに対し「自分たちに都合のいい勘違い」をしていて、その間違った認識をベースにした対英交渉を繰り広げていたことが描かれている。これは、軍部による横やりなどとは全く無縁のファクターであり、もし彼らが、ことは対英にかぎらず、正しい情報をもとに正しい国際認識をもっていれば、あるいは異なる歴史の歩みもあったのではないか。
とすれば、「昭和20年8月の終戦をもって日本を亡国の淵に追いやった軍部は一掃され、新たな平和国家となったのだから、これまでのような過ちを犯すことはない」という、おそらく一般に浸透しているであろう考えも、いかにも希望的、牧歌的、非現実的であって、日本の外務省が過去の失敗から正しく教訓を学んでいなければ、下手すりゃまた同じ過ちを、この国は犯してしまうのではなかろうか。
という意味でも、「軍部悪玉・外務省善玉史観のような単純な二元論」(p261、武田知己氏「解説にかえて」)で過去を語っている場合ではないのだ、と強く思う。

また、井口治夫氏の論考(こちらは対米)にも非常に重要なファクターとして登場する、「中国」の存在が、この書での日英関係においても同様にも非常に重要なファクターとして語られていることが、大変に興味深い。日本は中国ファクターをこれまで軽視しがちであったが、昨今の中国の国際社会での存在感をみるに、この「中国」という要素をふまえたうえでこれまでの歴史を再検証することも大事ではないかと思われる。

僕らはついつい、歴史を磐石的に自明のものと思ってしまいがちだが、案外と歴史とは柔らかく脆いもので、だからこそ、都合のいい手前勝手な解釈で納得し安心するのではなく、常に点検をし、アップデートをはかり、そこから得られるものを、いま、そして今後に活かしていくことは有用だと思っているし、そういった意味において、この本が企画・出版された意味は大きく、今後の日英関係研究の進展にも期待したい。

なお、外務省に対する僕の考えは、
「デモ隊が目指す未来」
http://frat.jp/forum/viewtopic.php?f=7&t=109
において、以下のように書いたので参考までに。
引用:
「戦争法案」に対する僕の対案。
戦争というのは外交の破綻で生じるものだから、外交が破綻しないよう、外務省の予算をいまの数倍にして、外務省から「スーパー外務省」へと生まれ変わらせ、兎にも角にも、外交力で危機に対処していったらどうか。
どうも日本外交は戦後対米追随ぺったりで、外交力が低下しているような気がする。今回の事態も、問題の根底には日本の低い外交力があって、それを軍事的な対策で何とかしのごうというのは、ちょっと違うんじゃないか。

ページ 11 All times are UTC + 9 hours
Powered by phpBB® Forum Software © phpBB Group
https://www.phpbb.com/