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モノづくり

お客さんを第一に、いいものを安く。戦後日本がモノづくりを軸に急成長できたのは、そうした姿勢が国際社会に高く評価されたからはないか。(初版日:2001年02月11日)

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葉ものを中心に野菜が高騰しているが、地元農協の販売所は大盛況である。ここではスーパーの半値で野菜が買える。おまけにとれたて新鮮。朝採った野菜を生産者自らが軽トラで持ってきて、棚にならべていく。ここでは地ものの野菜にはすべて生産者の名前がつけられている。同じ土地で採れた野菜でも、生産者によって品質も価格も違う。よい野菜を丹念に選りすぐり、安い値段で提供している人もいれば、選別が雑で、値段の高い人もいる。とうぜん、前者の野菜から飛ぶように売れていく。通いつめるうちに、「葉ものなら○○さん」とか、「ダイコンは○○さん」などと評価が定まってくる。評価が高いのは、お客さんを第一に、いいものを安く、愚直に提供しつづけている人である。野菜を手にとれば、生産者の人格がしのばれるのである。

また、クルマで30分ほど走ったところに、「イチゴ街道」があり、いまの時期には道沿いに直売所が立ち並び盛況である。我が家では、Nさんの直売所でイチゴを買うようにしている。ここは非常に人気のある店で、お客さんはいつもひっきりなし、すぐに売りきれてしまう。人気の秘密は、なんといっても味がいいことである。よく熟れていて、粒揃いで、香ばしく、ほとんどはずれがない。他の店で買うとたいてい、ちゃんと熟れていなかったり、粒がまばらだったり、パッケージ上の見えるところだけいい粒を敷いていたりして、がっかりすることがほとんどなので、もう買わない。それに、販売者のおばちゃんの売らんかな態度が見え見えだったり、粒の大きい高いのしか並べてなかったり、もうかりゃいい的な姿勢には非常に気分を害するものである。

Nさんの直売所のおばさんはそんなに愛想はないが、いい人である。でも、おばさんがイチゴを採っているわけじゃないので、きっとイチゴを育て、収穫しているNさんのおじさんの、いいものを安くという愚直な姿勢が素晴らしいのである。一粒一粒をもぎとるときに、きっとそういう姿勢は反映されるのである。テキトーに箱詰めして売っちゃえと心に思っていたら、まだ熟しきってなくても、もぎとっちゃったりするのである。お客さんを考えるその手が、いいものだけを選別してもぎとるのである。

経済大国日本などと偉そうなことを言っているが、もとをただせばアジアのちっちゃな島国である。資源もなにもない。おまけに太平洋戦争でアメリカ相手に大喧嘩売っといて、ものの見事に負けた国である。アメリカの支配下の焼け跡から始まった、貧相な国なのだ。それが世界に認められるまでに急成長をとげたのは、ひとえに、たくさんのNさんがいたからにほかならない。

ネットは、生産者と消費者をじかに結びつける。そこでは、いいものを安く、愚直に提供する生産者だけが生き残れる。「ネットでハッピー、大儲け」などと錯覚した生産者は、ほろびゆくのみである。

ブランドとは不当に高い値段でモノを売りつけようとする詐欺的商売だが、商売の基本は、お客さんを第一に考えて、いいものを安くという、地道な毎日の積み重ねである。戦後日本がモノづくりを軸に急成長できたのも、そうした姿勢が国際社会に高く評価されたからである。