東京は世界最大の規模を誇る大都市だ。 これ以上に拡大できない。 かりに拡大できたとしても、巨大すぎて大変だ。ただでさえ、狭い空間にひしめきあっている。 空間規模を維持するならさらに過密状態だし、 規模拡大なら物理的な距離が広がって不便だ。
ほんとは日本全土が「ほぼ東京」化すればいいのだし、 日本の成長はそこが限界だ。逆にいえば、日本はそこまで成長できるし、 余地はまだずいぶんある。 東京(および他大都市)と地方との格差が大きいからだ。 狭いニッポン、といっても、全国的にみれば土地はずいぶんあまっている。 森林など国土保全に必要な自然や、食料自給に必要な農地を除いても、 土地はまだまだ余っている。東京と地方との格差がなくなり、ある意味で全国が「ほぼ東京」化することは、いまの日本が抱えているさまざまな問題を解消できる。過疎と過密、地方に押し付けられる廃棄物の問題、住環境、生産者と消費者の距離の縮小、ええとあと何があったっけ?とくに「生活空間倍増」計画の達成には「全国ほぼ東京」化しかない。
で、「全国ほぼ東京」化するには、物理的な距離をクリアするための情報通信のインフラ整備が必要だ。またフロー人材の保護・整備も必要だろう。田舎でSOHOを営むことが今後の日本のモデル的なスタイルになるからだ。フロー(アウトソーシング)で企業はコストダウンをはかれるし、働く側にしても会社帰属的な発想ではなく、また会社漬けの企業戦士から、家庭や地域などにも参加する。そして仕事一辺倒ではなく趣味や、あるいは稼ぎが少なくても畑で自前の野菜などつくることでそれを補う、デスクワークと農作業といった、バランスのとれたライフスタイルが求められる。NTTには、長距離電話の料金引き下げ、固定料金制の導入、あるいは思いきって長距離電話の無料化などしてもらいたい。
さてそんなことで仕事のうえでは田舎暮らしが可能になったとして、 問題は遊びである。東京は遊ぶとこがいっぱいあって、若いネエちゃんもいっぱいいるんである。
「東京ランド」を各地に建設することを提唱したい。
東京ランドとは、ディズニーランドのようなテーマパークである。ディズニーランドはディズニーの架空のファンタジーを具体化したが、東京ランドは実在する東京という都市のファンタジーを具体化するものである。働く場所・東京ではなく、遊ぶ場所・東京である。ファンタジー、夢の王国には違いない。東京はその実在以上に、イメージによって確たる存在なのだから。
東京ドーム○個ぶんの面積。外周部分を城壁で囲った、中世城塞都市のような造り。城壁の上には首都高という名のサーキットをつくり、マイカーで自由に走らせるとよい。城壁の中は渋谷、新宿、六本木、原宿、青山、表参道といった、人気スポットがよい。秋田の東京ランドは青山と六本木、鳥取の東京ランドは渋谷と原宿といったように、各地の東京ランドごとに特色をもたせるのもよい。渋谷なら渋谷の街並みをデフォルメし、いいとこどりして作ればいい。公園通り、センター街などを配置し、ハンズや西武などの大型店舗から、喫茶店、ブティック、レストランなども支店として誘致する。ホントの東京にくらべて実入りが少なければ、東京ランドの入場料収入の一部をショバ代として逆に店舗がわに支払うようにすればいい。
街の魅力はハードだけではダメだ。そこに集まる「ひと」も重要。ディズニーランドでの「キャスト」の役割を、サクラのバイトが果たす。センター街の女子高生、怪しい路上のアクセサリー売り外人、ナンパ野郎、ティッシュ配りなどを配置する。赤線を復活させ、公娼を街角に立たせるというところが出てきてもいいかもしれない。
東京ランドという、ファンタジーとしての歓楽街でひとときの「アーバン気分」を地方で気軽に味わう。そこにたどり着くまでの交通渋滞も、大気汚染もなく、警備の行き届いた環境で犯罪に巻きこまれることもない。コンビニみたいに手軽で安全で、すぐ近くにある東京。 それが東京ランドである。 |