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科学技術者と戦争

「科学主義」昭和21年3月号(科学主義工業社改称/科学社発行)に、「軍服を被せられた科学者(日本科学技術陣営破れたり・1)」という文章が載っていた。筆者は山本洋一氏。

日本の敗戦の原因はこの戦いを始めたことである。戦いに敗れた今日から見れば、我日本の実力が聯合諸国に劣っていたことからして敗戦は当然であり、始めからわかっていたともいえる。戦争がすんでからこうした説をたてる人が実に多い。例えば「我々は皆戦争中からこんな馬鹿な戦争を始めて負けるにきまっていると思っていた。だからあまり軍に協力しなかった。しようとしてもできなかった」という様な議論である。然しながら現在こうした説をたてている人々の中には戦時中大いに軍に協力し、比較的多額の嘱託料と研究費を受取り、しかも日本に実力ありと誇示することを怠らなかった指導的地位にあった人々も少なくないのである。
この度の戦いは科学技術戦であるといわれている。フィリピンの作戦に敗れて山を下って米軍に降伏した山下奉文が敗戦の原因を問われて、ただ一言「サイエンス」と答えたとのことによっても明らかである。
…(略)…
この度の戦いに際しては我国に於いても科学技術者は殆どすべてが戦争目的に対して動員されていた。敗戦に及んで傍観者として軍に協力しなかったということをむしろ誇りとして、「今度の戦争犯罪人中の技術指導者とか、その手下の連中に、お前達は一体どんな気持ちで戦ったのかときいたら面白かろう」等と御託をならべている或る科学技術者も嘗て言論報国会の理事として「努力しないと戦いに負けるぞ」と叫び、各地を遊説して軍需会社のご馳走になり、徴用工とか学徒に気合をいれていたのである。

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