庭に小さな畑で、野菜をちょこちょこと作っている。
毎年、この連休中に苗を植えたりするので、いつものようにホームセンターに行ったら、案の定の大賑わい。
小さな子ども連れの若い家族もいるが、メインは年配客。たいてい夫婦で買いに来ている。
ある程度の年齢の方なら畑作業もベテラン、と思ってしまいがちだがさにあらず。多分だけど、ビギナーが案外と多い。苗につけられた説明書きとかを熱心に読み比べて回ってたりする。ベテランなら周知事項だから読まないと思う。
そもそも苗のラインナップ自体がビギナーへの訴求効果を狙っている。どの作物もだいたいそうだと思うけど、家庭菜園で確実な収穫が期待できるのはごく平凡な品種。謳い文句につられて珍しいものを買っても、あとでがっかりすることが多い。…というのはひととおり経験してみればわかるので、ベテランには謳い文句はあまり通用しない。苗売り場にずらっと陳列された、これでもか的な苗のラインナップはだから、経験値の浅い人向けということになる。
あるいは、家庭菜園についての知識は今ではネットでいろいろと手に入るが、素人の書いてることはどうも怪しい内容が目につく。一見説得力があるように思えても、自身の少ない経験に基づくものだったり(←ブログなどは「初めての○○づくり!」が多いし)、思い込みや受け売りも多い。過度のウンチクとか。
要するに、ビギナーに次ぐビギナー、世の中ビギナーだらけなのだ。
つまり、いまの高齢者は、僕らがなんとなく思い込んでいるほどの経験値を持っていない。そして、これはおそらく、家庭菜園に限った話では、ないはずなのだ。
団塊の世代以降はいわば歴史と伝統から切り離され、戦後日本を生きてきた。働く男は企業社会でずっと暮らしてきた。それぞれが所属した企業社会の風土において、その経験値は有用なものであったかもしれないが、それは一般社会で有用ではないし、他の企業社会でも役に立たない。おまけに賞味期限切れだったりもする。
つまり、彼らが長い人生をかけて培ってきた経験値の大半は汎用性がない。
一方、インターネット社会においても彼らはビギナーである。どんどん新しいツール、新しい考え方が出てきて、若い世代は最初からそれを前提にしてくるけれども、高齢者世代にとっては、ただ目まぐるしく新しいものが流れてやってくるだけで、ついていければいいほうだ。
というわけで、いま、過去を振り返ってもビギナー、前を向いてもビギナーという、蓄積した経験値というものがおよそ何も役に立たない、「ビギナー老人」が大量発生している、ということがいえるのではないかと思う。