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特ダネが取れる「楽な取材法」とは

入社直後の社内研修での、当時の地方部長の言葉が忘れられない。取材記者としての成長過程について、彼はこう言った。
「君たちは地方支局に行ってすぐには、親しい人もいないだろうから、足しげく取材対象者に通え」。続けて「時間がたって親しい人ができたら、いちいち会いにいかなくても、電話で情報が得られるようになれ」。最後に、「相手が情報を言ってきてくれるようになれば、一人前の取材記者だ」と。
(『実践ジャーナリスト養成講座』より引用)

この部分を書いた元読売新聞記者の木村恭子というひとは、これが取材だと、これが取材記者だと、本気で思っているらしい。あるいは、これがジャーナリストだと思っているかもしれない。いまだにこんな説教を垂れている部長とか、それをまともに信じ込んでる記者とかが、おそらく大勢いるのであろう。
これは、あるテリトリーのなかにおいて、信頼されるスポークスマンの座を射止めるための方法。前提として、新聞社という看板をしょった、支局というニュースネットワークの成員であることが必要だろう。営業でいうとルートセールス。ま、そういう取材もあるのだろうが、それが取材のすべてではない。
少なくとも、どこの馬の骨かわからぬ一介のフリーランスであるぼくは、これまで一度もこうした取材をしたことがない。アホらしくて、そんな取材したくもない。
いちど、某社の地方記者と大口論になったことがある。彼は、地元との関係を崩すような取材はやめろと言った。ぼくは、あくまで事実を追うのが第一だと言った。彼にとって、ぼくは、自分のテリトリーを乱す邪魔な存在だったと思う。ぼくにとって、彼は、自分のテリトリーにしがみつく怠け者だった。
記者稼業は早死にだと聞くから、その意味では大変なんだろうが、もうちょっと別のところで労力を費やしたほうがよいのではないのか。
ジャーナリズム=スポークスマン、ではあるまい。

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