「悪いのは私たちじゃなかったのだ」
朝日新聞2012年9月30日13面(読書)、『戦後史の正体 1945-2012』の書評。佐々木俊尚氏。
「本書は典型的な謀略史観でしかない」という評よりむしろここ。
終戦直後に出た『旋風二十年』という本がある。戦中は多くを報道できなかった新聞記者が「実は軍部が悪かったのだ」と暴いた本だ。当時の国民はこの本に「そうだ、悪いのは私たちじゃなかったのだ」と胸をなで下ろし、結果として戦争責任の問題は他人事へと押しやられた。いまで言うと、「2011年当時の国民は「そうだ、悪いのは政府だ東電だ原子力村だ御用学者だ」と態度を豹変させて批判し(※批判されるのは偉い人だったりエリートだったりで、おもねる対象だったり受験勉強の目標だったりで、それは今も変わらないのに関わらず)、結果として原発責任の問題は他人事へと押しやられた」となるかな。
名指しで批判され悪役になった軍部って、いま批判されてる彼ら同様、戦前は「おもねる対象だったり受験勉強の目標だったり」だったし。
それにしても新聞記者、戦前戦中は「報道できなかった」んじゃなくて「報道しなかった」んじゃん。権力におもねるというより、権力と不可分の存在だったしね。