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2012年10月 アーカイブ

2012年10月02日

「悪いのは私たちじゃなかったのだ」

朝日新聞2012年9月30日13面(読書)、『戦後史の正体 1945-2012』の書評。佐々木俊尚氏。
「本書は典型的な謀略史観でしかない」という評よりむしろここ。

終戦直後に出た『旋風二十年』という本がある。戦中は多くを報道できなかった新聞記者が「実は軍部が悪かったのだ」と暴いた本だ。当時の国民はこの本に「そうだ、悪いのは私たちじゃなかったのだ」と胸をなで下ろし、結果として戦争責任の問題は他人事へと押しやられた。
いまで言うと、「2011年当時の国民は「そうだ、悪いのは政府だ東電だ原子力村だ御用学者だ」と態度を豹変させて批判し(※批判されるのは偉い人だったりエリートだったりで、おもねる対象だったり受験勉強の目標だったりで、それは今も変わらないのに関わらず)、結果として原発責任の問題は他人事へと押しやられた」となるかな。
名指しで批判され悪役になった軍部って、いま批判されてる彼ら同様、戦前は「おもねる対象だったり受験勉強の目標だったり」だったし。
それにしても新聞記者、戦前戦中は「報道できなかった」んじゃなくて「報道しなかった」んじゃん。権力におもねるというより、権力と不可分の存在だったしね。

2012年10月22日

科学技術者と戦争

「科学主義」昭和21年3月号(科学主義工業社改称/科学社発行)に、「軍服を被せられた科学者(日本科学技術陣営破れたり・1)」という文章が載っていた。筆者は山本洋一氏。

日本の敗戦の原因はこの戦いを始めたことである。戦いに敗れた今日から見れば、我日本の実力が聯合諸国に劣っていたことからして敗戦は当然であり、始めからわかっていたともいえる。戦争がすんでからこうした説をたてる人が実に多い。例えば「我々は皆戦争中からこんな馬鹿な戦争を始めて負けるにきまっていると思っていた。だからあまり軍に協力しなかった。しようとしてもできなかった」という様な議論である。然しながら現在こうした説をたてている人々の中には戦時中大いに軍に協力し、比較的多額の嘱託料と研究費を受取り、しかも日本に実力ありと誇示することを怠らなかった指導的地位にあった人々も少なくないのである。
この度の戦いは科学技術戦であるといわれている。フィリピンの作戦に敗れて山を下って米軍に降伏した山下奉文が敗戦の原因を問われて、ただ一言「サイエンス」と答えたとのことによっても明らかである。
…(略)…
この度の戦いに際しては我国に於いても科学技術者は殆どすべてが戦争目的に対して動員されていた。敗戦に及んで傍観者として軍に協力しなかったということをむしろ誇りとして、「今度の戦争犯罪人中の技術指導者とか、その手下の連中に、お前達は一体どんな気持ちで戦ったのかときいたら面白かろう」等と御託をならべている或る科学技術者も嘗て言論報国会の理事として「努力しないと戦いに負けるぞ」と叫び、各地を遊説して軍需会社のご馳走になり、徴用工とか学徒に気合をいれていたのである。

2012年10月28日

愛想笑いの起源

北川景子主演の日テレのドラマ「悪夢ちゃん」。
昨夜放送された第3話のエンディングは、衝撃的だった。

北川景子演じる主人公の小学校教師はクラスの児童らに愛想笑いをやめろと言い、自らも愛想笑いをやめる。

考えた。僕らはいつから愛想笑いをしているのか。昭和20年に戦争に負け、GHQが進駐してきてギブミーチョコレートと言い出すようになってから、僕ら(といっても僕はまだ生まれてないが)はずっと愛想笑いを続けているのではないか。
主人公のように自分を殺し、自分を偽って(=からっぽのアイデンティティ)、彼女の担当するクラスの小学生たちのように深刻な問題に直面するのを先送りにし、互いに顔を見合わせてなんとなくへらへらと愛想笑いを浮かべているのではないのか。

(ちなみに、問題先送り体質といじめ体質は同根だというのが僕の仮説でもある)

また、主人公の夢の中だったか、「顔のない小学生」も出てくる。これには「千と千尋の神隠し」に出てくる「カオナシ」がダブった。
(カオナシは僕らの象徴であるというのも僕の仮説)

これは娯楽番組に巧妙に挿入された、確信的かつ核心的な日本社会への批判と受け取った。
ものすごいドラマを作るものだ。

ドラマの原案は恩田陸氏の『夢違』ということだが内容はまったく違うらしいから、おそらく脚本の大森寿美男氏によるものか。
その意図を直接聞いてみたい気もする。

2012年10月31日

歴史と現在

私は現代史の専門家として、戦争と平和の問題に時間を費やしてきました。その中で、特に関心を持ってきたのは『歴史』と『記憶』の関係です。歴史は過去の研究のようにみえますが、常に現在の人間が利用し、多くの場合は誤用する。そのため、記憶と歴史の関係は今日の世界情勢にも影響し、しばしば議論を巻き起こします。
〜ジョン・ダワー氏インタビュー、朝日新聞2012年10月30日朝刊13面

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