「夢」のインフレ
ぼくは子どもの頃、将来の夢がなかった。
多分なかったと思う。記憶にない。
なんとなく、「こんな感じの大人になりたい」的な希望像はあったけど、それは夢ではない。
高校の頃は2つの夢があった。
1.音楽でプロになる(当時は甲斐バンドとかのイメージ)。
2.薬師丸ひろ子のマネージャーになる。
大学入学で上京後、これらの夢はすぐに消え飛んだと思う。
いま、しきりと「夢を持とう」と夢保持が推進されているが、たとえば、「サッカー選手になりたい」という子どもが増えると、日本サッカー界の底上げにはなるが、子ども一人一人が夢にたどり着く確率は、その夢を持つ子どもの増加と反比例に低くなる。JがJ1からJ3までできればそりゃJでのプレー確率は高まるが、結局のところ、日本で世界で一握りのサッカープレイヤーになれる確率はどんどん狭き門となる。もちろんそれだけステイタスは高まるわけだが、そのステイタスは多くの夢の人柱の上に成り立っている。
みんなが夢を持てば、こうした「夢のインフレ」状況となる。
それはいったい、誰が望むことだろうか。
夢なんかなくたって生きていける。